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薄板溶接、製作可否に関わる重要ポイント「クリアランス」という敵
「薄板溶接案件を相談したが、この形状は難しいと断られた…」
「依頼したものの、思った通りの溶接品質に仕上がっていなかった…」
薄板部品をご依頼される中で、このようなトラブルに直面したご経験はないでしょうか?
実は、その原因の一つが部品同士の「クリアランス(隙間)」です。
このクリアランスが大きいとうまく溶接できずに品質低下につながります。
部品を支給しての加工依頼の際でも、この点を理解しておくことは、依頼先との連携につながり理想の製品実現につながる材料になります。
そこで今回は、「クリアランスの違いが溶接品質にどう影響するのか」を実際の検証結果をもとにお伝えした上で、どんな製品を依頼する際に気をつけるべきかをご紹介します。
【目次】
薄板溶接におけるクリアランスとは?
上述の通り、クリアランスとは、溶接する部品同士の隙間のことです。
一般的に、クリアランスを板厚の10%以内に収めることが一つの目安になります。理由としては、隙間が空きすぎると溶けた金属が橋渡しできず、接合できなくなるためです。
板厚が厚い部品であれば、多少の隙間は溶接条件の調整で埋めることができます。しかし薄板は熱容量が小さいため、出力を上げれば溶け落ちによる穴が発生したり大きく歪んだりしてしまいます。
では、クリアランスが変わると溶接品質にどのような変化があるのか、実際に実験を行い確認しました。
【検証実験】クリアランスが大きいとどうなるのか?
クリアランスの違いが薄板溶接にどのような影響を与えるのか、実際に当社で検証実験を行いました。
【実験概要】
下記の4種類のスリットが入ったSUS304板材について、それぞれ溶接を実施し、評価を行いました。
・材質:SUS304
・板厚:t=0.5mm
・スリット幅:0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm 4種類

図1. 4種類の板材
【実験結果】
スリット毎の溶接品質については下記のような結果となりました。
①スリット幅:0.1mm
裏までは溶け込まない出力設定にて、溶接自体は可能。

②スリット幅:0.2mm
裏まで溶接が出ない設定では溶接不可(左写真)。出力を上げると溶接はできるが、熱影響で大きく歪む。(右写真)

③スリット幅:0.3mm
出力を上げても歪みが発生し、溶接部が凹む。

④スリット幅:0.4mm
出力を上げても接合できず、溶接不可。

実験の通り、クリアランスが大きくなるほど、溶接は難しくなります。
今回は、板厚が0.5mmであったため、多少出力を上げる調整ができましたが、板厚が薄くなるほど出力を上げられなくなるので、さらにクリアランスにシビアになります。
一方で、クリアランスを埋めるためにレーザー出力を上げると、熱影響が大きくなり、歪みの増加や溶接跡が目立つ原因となります。その結果、仕上がり品質が低下し、寸法公差を満たせなくなる可能性があります。特に組み立てを伴う製品では、相手部品との嵌合不良を招く恐れがあります。
なお、今回ご紹介した内容は、あくまでクリアランスの影響を確認するための実験結果です。実際の製作では、適切なフィラー材が使用できる場合には肉盛り溶接を選択することも可能です。また、一般的には難しい条件であっても、弊社では長年培ってきた独自の微細溶接ノウハウを活かし、対応できる場合があります。
クリアランスが問題になる3つのケースとその対策
実験結果の通り、わずかなクリアランスが品質を左右します。では、どのような製品・構造で生じやすいのか。3つの例と、ご依頼の段階でできる対策をご紹介します。
①パイプなど差し込み部品の溶接をする場合
部品を差し込むことを前提に、組み立てやすさを優先して、余裕を持ったサイズに設計してしまうと、隙間ができて溶接できません。
この場合は、差し込み部をクリアランスゼロ、もしくは軽圧入となる寸法に見直すと品質が安定します。組付け性と溶接性はトレードオフになるため、どの程度の圧入なら現場で組めるかを含めて、図面段階で調整をすることも可能です。
②ロウ付けから溶接へ変更する場合
ロウ付けの場合は、ロウ材を流し込むために意図的にクリアランスを設けます。そのため、過去にロウ付けで製造していた部品を同じ図面のまま溶接に切り替えると、隙間が広く不良が発生します。
上記の場合、ロウ材用の隙間を除いた溶接用の寸法へ変更する必要があります。
③突き合わせ溶接の場合
上述の差し込み部品だけでなく、突き合わせ溶接であっても、溶接不良につながります。設計上は密着していても、切断面が荒れていたり寸法にバラツキがあれば、そこにクリアランスが生まれます。
したがって重要になるのは、「高い切断精度を前提とした設計」です。設計段階から必要な寸法公差を適切に設定することで、クリアランスの発生を抑えられます。
>>設計者に押さえて欲しい!微細溶接におけるポイントはこちら
当社の製品事例をご紹介
事例①:医療向け薄肉パイプ溶接
こちらは医療向けの微細溶接パイプです。当初、医療現場ではさらに長いパイプを使いたいという要望があったそうですが、このパイプは何段階もの絞りを経て製作されるものなので、長くするにはどうしても制約がありました。
そこで微細溶接技術を持つ当社にお声がけ頂き、この課題をパイプを溶接することで解決しました。本事例のように、厚みの違うパイプ同士を微細溶接するためには、様々な条件を整える必要があります。通常のレーザー溶接では溶接さえできませんが、当社ではこのように溶接ビードも綺麗に、かつ歪みなく仕上げております。
事例②:板厚0.3mm正三角形24面体の薄板溶接
こちらは一辺が20㎜の正三角形24枚を全周溶接して製作いたしました。専用治具を使い一辺一辺溶接していくのですが、製作のポイントは設計段階にあります。展開図の段階から数十ミクロン単位で調整を行い、三角形24枚が全て組み上がったときにピッタリと合わさるように設計しております。
その展開図を薄板専用レーザー切断機で切り出し、歪みの少ないファイバーレーザー溶接で加工することによって設計通り精密な製品に組み上げました。
理想の薄板製品を実現するには・・・
歪みのない高品質な薄板溶接を実現するためには、クリアランスを「板厚の10%以内」に抑える設計と、それを形にするための高精度な切断加工および溶接技術が不可欠です。
当社では、今回ご紹介した設計に関するご提案はもちろんのこと、ファイバーレーザー切断機やファイバーレーザー溶接機などの最新設備と熟練の技術者によって高品質な加工を行っています。
「こんな形状を作れないか?」「他社で断られてしまった」といったご相談やお悩みがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人
中村 義人(株式会社マツダ 統括マネージャー)
精密板金に携わって35年以上。幅広い金属加工の知識と経験から蓄積されたノウハウをもとに、
微細溶接の技術は8年前から本格的に技術開拓中。
工場板金検定1級を取得し、実務と資格を両立させた技術力で、板金加工・溶接の現場に貢献しています。







