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薄板カバー・ケース(立体物)の気密溶接・水密溶接|漏れを防ぐポイントと製作事例
防水ケースやカバー、パイプといった製品で、気密性(水密性)について悩まれたことはないでしょうか。
特に、薄板を用いた箱物やカバーなどの立体構造や、熱交換器のような流路を持つ製品では、溶接時の熱による歪みや溶け落ちの影響を受けやすく、気体・液体の漏れを防ぐための高い気密性・水密性の確保が難しいことから、対応できるメーカーは限られます。
このように、気密溶接は内部の気体・液体が漏れないようにするため非常にシビアな品質が求められ、特に薄板製品の溶接では、
「溶接の熱で歪んで隙間ができてしまう」
「溶け落ちてしまい、気密性が保てない」
といった課題がつきものです。
そこで今回は、薄板の立体構造物においても強度を保ちながら漏れを防ぐ、気密溶接・水密溶接のポイントと、展示会でも多くの反響をいただいた当社の製作事例をご紹介いたします。
漏れを防ぐ!気密溶接・水密溶接を依頼する際のポイント
では、どうすれば漏れを防ぎ、気密性・水密性の高い製品を実現できるのでしょうか。
気密溶接・水密溶接を成功させるためには、以前もお伝えしましたが、依頼時に以下のポイントを明確にすることが重要です。
①どのような液体・気体を扱うか、またその許容リーク量を明確に伝える
②クリアランスはできるだけ少なくする、肉盛り溶接での仕上がりが許容可能かなど、気密性と外観品質を設計段階で十分にすり合わせを行う
こうした条件整理に加え、特に重要になるのがメーカー側の技術力です。
薄板の立体構造物では、
・コーナー部や三次元形状における歪みの制御
・入熱過多による変形やピンホールの防止
といった高度な対応が求められます。
そのため、まず設計段階から、
・仕様や用途に応じた最適な溶接工法の選定
・極薄板でも安定した入熱管理が可能な溶接技術
といった、気密溶接のノウハウを持つメーカーへ相談することが、手戻りを防ぎ、スムーズに開発を進めるポイントです。
気密溶接のサンプル例のご紹介
当社では、適切な工法の選定と溶接時の入熱を適切にコントロールすることで、薄板のケース・カバーなどの立体構造物においても、歪みを抑えながら強度とシール性を両立し、高い気密性・水密性を確保しています。
従来は難しいとされてきた薄板形状においても、こうした技術により気密溶接・水密溶接を実現しており、展示会でも多くの反響をいただきました。
そこで、当社の薄板立体構造における気密溶接・水密溶接のサンプル品をご紹介いたします。
事例①:板厚0.1mm薄板ステンレスの拝み(おがみ)溶接事例(金属ふうせん)

こちらは、お客様より、「熱歪みを抑えるため入熱の少ない共付けで依頼したいが、気密性は確保できるのか」とのご相談をいただき、その検証を目的として製作したSUS304製サンプル品です。板厚0.1mmの薄板2枚を重ね、肉厚部(0.2㎜)を接合する「拝み溶接」により袋形状を形成しています。
溶接後にエアーを注入し加圧試験を実施したところ、下記図2のように、0.5MPaまで破断することなく、風船のように膨張しました。これにより、十分な気密性および強度を有することを確認しました。
本事例のように薄板の肉厚部という、極めて狭く高精度が求められる溶接箇所においても、当社は多数の接合実績を有しております。
事例②:板厚0.1mm薄板ステンレスの共付け溶接(正方形の全周溶接)

こちらは、「薄板ステンレスの共付け溶接でも気密性を確保できるのか」というお問い合わせをいただいたことがきっかけで製作した製品事例です。板厚0.1mmの薄板ステンレスを6面張り合わせ、共付け溶接による全周溶接で気密構造を製作しています。立方体という構造上、直角90℃で共付溶接をするため、固定させながら溶接するのが非常に難しく、また12辺分を溶接するため周長が伸び、加工が特に難しくなります。
本事例でも、溶接後にエアーを注入し、風船のように膨らませる耐圧試験を行い、0.65MPaまで破断することなく加圧することを確認しました。実際にエアーを注入している様子を動画でまとめています。
(サムネイル)
一般的に、薄板ステンレスの溶接は熱影響を受けやすく、溶け落ちや歪みが発生しやすいため、高品質な溶接が難しいとされています。
また、薄肉部の強度を補うために肉盛り溶接を行おうにも、
・適合する溶接ワイヤーがない
・ワイヤーを溶かすために出力を上げる必要があり入熱が増え、歪みが発生する
といった課題があります。
今回の事例では、ワイヤーを使用せず共付け溶接で施工することで、薄板でも歪みを抑えながら気密性を確保することができました。
ケース・パイプへの応用事例
ここまで気密溶接・水密溶接の例としてサンプル事例を2つご紹介いたしました。ここからは、実際に当社へ依頼があった、薄板への気密溶接・水密溶接の具体的な製品例をご紹介します。
①軽量化と気密性・水密性を両立する「ケース・カバー」
気密溶接・水密溶接は防水・防塵性が求められる板物・ケース・カバー類にも幅広く適用できます。
例えば、真空蒸着装置などで使われる「蒸着ボート」は、加熱効率を上げるために「できるだけ薄く軽くしたい」というご要望をよくいただきます。しかし、板厚を薄くするほど溶接時に穴が空きやすくなり、溶融した高温の金属や液体が漏れ出すリスクが高まります。
この「板厚をできるだけ薄くしたい、でも水密性は必要」という場合にこそ、気密溶接・水密溶接が役立ちます。
下記は、「薄板ニオブの蒸着ボート(板厚0.1mm)」です。

高い融点(2,468℃)を持つ反面、高温で様々な物質と反応し脆くなるため溶接が非常に難しいニオブ材を使用した事例です。板厚わずか0.1mmですが、ファイバーレーザー溶接と独自のノウハウにより、水張検査を行っても一切漏れのない気密性を実現しています。
②流路のある複雑な構造のパイプ・ノズル
パイプやノズルなど内部に液体や気体を通すための複雑な構造を持つ部品にも応用が可能です。
下記は市販品の薄肉パイプ(板厚0.3mm、Φ2mm)にノズルを溶接した薬液用深穴ノズルです。

このような薄肉・小径の部品を溶接する場合、通常は熱影響で内側に歪みが出たり、溶接時に内側まで溶け込みが発生し、内径が狭まったり、ふさがってしまうことが懸念されますが、ファイバーレーザー溶接機による共付け溶接によって、内部への熱影響を防ぎながら漏れのない高品質な接合が可能です。
気密溶接のことなら、(株)マツダにお任せください!
今回ご紹介したサンプル品や製品事例の通り、適切な工法と入熱管理を行うことで、強度を保ったまま、気密性を保った溶接ができます。 薄板のケースや防水カバーから、内部に薄板の仕切りの溶接もできるような複雑な構造体まで、幅広い製品の気密化・水密化に対応可能です。
「この板厚で気密性を保つのは厳しいかもしれない…」
「溶接による熱歪みが、製品精度にどう影響するかわからず悩んでいる」
気密溶接について少しでもお困りのことがあれば、図面が確定する前の構想段階でも構いませんので、ぜひ一度当社にご相談ください。漏れを防ぐための最適な設計形状や溶接工法を共に考え、形にするまでサポートいたします。




