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美観性と強度のバランスを考慮したベストなアルミの薄板溶接とは?
「アルミ溶接」は特に薄板となると、その難易度は格段に跳ね上がります。
「強度を出したいが、歪み(ひずみ)は抑えたい」
「外観をきれいに仕上げたいが、すぐに割れてしまっては困る」
このようなアルミ溶接における強度・美観性をどう折り合いをつけるべきかについて、溶接手法による違いや選定方法を解説します。
なぜ、アルミ薄板の溶接は難しいのか
そもそも、アルミは鉄やステンレスに比べて熱伝導率が極めて高く、融点が低い金属です。熱がすぐに逃げてしまうため、溶接時には大きな入熱が必要になりますが、逆に熱を加えすぎると一瞬で溶け落ちてしまったり、激しい「歪み」が発生したりします。
これが薄板になると、さらに入熱の許容範囲が狭まります。強度のために十分な溶込みを確保しようとすると歪んでしまい、歪みを回避しようとして強度不足になるというジレンマが、設計者を悩ませる最大の要因です。
アルミ溶接の種類と強度の比較
一般的に、アルミの溶接にはTIG溶接、MIG溶接、ファイバーレーザー溶接、抵抗溶接が用いられます。厚板であればMIG溶接などが選ばれますが、「薄板」では、主にTIG溶接とファイバーレーザー溶接が多く採用されます。
当社では、製品の用途や求められるスペックに応じて、以下の3つの手法を使い分けています。それぞれの強度や特徴を比較してみましょう。
1. TIG溶接(肉盛り)
ワイヤーを加えて肉盛りを行います。しっかりと裏波が出るまで溶かし込む場合、溶融域が深く、非常に高い強度が得られます。強度が得られる一方で、入熱量が大きいため、溶接跡が太く、熱影響による歪みが発生しやすいデメリットがあります。
2. ファイバーレーザー溶接(肉盛り)
レーザー技術を用い、溶加棒を加えて溶接します。TIG同様に裏波を出す強い溶接が可能で、レーザー特有の「深く狭い」溶込みが特徴です。またTIGに比べて溶融域が狭いため、強度を確保しつつも熱影響を抑えることができます。
3. ファイバーレーザー溶接(共付け)
母材同士をレーザーで溶かして接合する手法です。溶接出力が小さいため、TIG溶接・ファイバーレーザー溶接の肉盛り溶接と比較して、歪みを抑えた美しい外観が得られますが、溶込みが浅い分、強度はTIG溶接・ファイバーレーザー溶接の肉盛り溶接に劣ります。美観重視のカバーなどに適しています。
【比較テスト】アルミ薄板溶接の各溶接方法を比較してみましょう
実際にご紹介した、TIG溶接(肉盛り)、ファイバーレーザー溶接(肉盛り・共付)で溶接したテストサンプルを作成しました。
・使用した試験片:A5052t1.0 30×100 平板の突き合わせ溶接
①Tig溶接(肉盛り溶接、裏波あり) 溶接幅 約5㎜


②ファイバーレーザー溶接(肉盛り溶接、裏波あり) 溶接幅 約3mm


③ファイバーレーザー溶接(共付け溶接、裏波あり) 溶接幅 約2m


各溶接方法を比較すると、①TIG溶接(肉盛り)と②ファイバーレーザー溶接(肉盛り)は歪みはほとんど同じですが、TIG溶接は溶け込みが大きい分溶接幅は大きくなっています。③ファイバーレーザー溶接(共付け)は①TIG溶接(肉盛り)と②ファイバーレーザー溶接(肉盛り)と比較して、歪みが抑えられ、溶接幅も小さくなっています。
※溶接幅は使用するワイヤーにもよります。
ここまでは裏波を出したサンプルで比較をしましたが、裏波を出さない共付け溶接も多くご依頼を頂くため、裏波を出さない場合のテストサンプルも製作してみました。
④ファイバーレーザー溶接(共付け溶接、裏波なし)溶接幅 約1.5mm


このように、歪みも抑えられたきれいな外観に仕上げることができます。①~③のテストサンプルと比較しても、仕上がりは全然違いますね。
ただし上述のように、強度の面から考えると、
Tig溶接(肉盛り)>ファイバーレーザー溶接(肉盛り)>ファイバーレーザー溶接(共付け)>ファイバーレーザー溶接(共付け溶接、裏波なし)
となりますので、「どの程度の強度が必要で、どの程度の歪みが許容されるか」によって、最適な工法が変わります。
ちなみにアルミの薄板強度については、上記とは条件が違いますが、以前下記条件でテストピースを作成し、引張試験を行いました。
ご参考までにご覧ください。
◆試験条件
・テストピース :150mm×25mm
・溶接方法:ファイバーレーザー溶接(共付け)
・試験機:万能材料試験機
※グレーの部分は該当する溶接方法には適さない板厚のため、試験範囲外

試験結果をみると、アルミは板厚が薄くなるほど、一体物との強度差が大きくなることが分かります。今回の結果よりも強度を持たせたい場合は、溶接方法の変更や溶接条件を変更することで溶け込み量を増やし、強度を持たせるノウハウがあります。
形状によって提案できる内容が変わりますので、具体的な目標値がお決まりでしたら、ご相談時にその旨お申し付けください。
アルミの薄板溶接の製作事例
アルミ製品は非常に有益な特徴を持った材質であり、多くの製品で利用されています。(株)マツダは長年の薄板板金の知見から技術力が求められるアルミの溶接品を多数納品してまいりました。ここでは当社が製作した溶接品をご紹介いたします。
箔板t0.1アルミの100角サイコロ全周溶接

本事例は薄板用のファイバーレーザーで溶接した事例です。1辺の長さ100mmで12辺ございますが、全て全周溶接しております。大きな歪みや溶け落ちによる穴がなく、高品質な製品製作を実現しております。アルミの薄板ともなりますと加工難度は上がりますが、弊社では技術探求の末、板厚0.1mmでも加工可能となっております。
実際に、本製品を製作した様子も合わせてご覧ください。
アルミの薄板溶接のことなら、マツダにお任せください!
アルミ薄板の溶接は求める仕様・機能によってどんな溶接方法が最適かが変わります。
・とにかく強度が欲しいなら、TIGの肉盛溶接
・強度も欲しいが、歪みも抑えたいなら、ファイバーレーザーの肉盛り溶接
・美観と低歪みを優先するなら、ファイバーレーザーの共付け溶接
など、強度・外観品質・歪みのバランスを考慮して溶接方法を選択できます。したがって、ご要望に応じて最適な溶接方法が選択できるメーカーに依頼することが重要です。
株式会社マツダでは、アルミ薄板溶接に対応可能な設備と熟練技術者を揃えています。「この図面の場合、どの溶接がベストか?」と迷われた際は、一度設計段階からご相談ください。用途に合わせた最適なご提案をいたします。




