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今ある形を「そのままに」精密板金を軽量化する方法
今回は、精密板金の軽量化についてお伝えしたいと思います。
精密板金の製品重量というのは、当たり前ですが「板厚」に大きく左右されます。
それほど強度が必要ない場合であっても、精密板金はt=1.0mm程度までの板厚しか「技術的に」対応できないケースが多くあり、頑張って製作しても0.8mmまでが限界、というのが世の中の常識とされてきました。
理由としては、普通に溶接を行うと歪みが生じるため、これ以下の板厚に下げることが現実的でないためです。
しかし近年、薄板溶接・微細溶接の技術向上により、この「精密板金の板厚は1.0mmまでが目安」という常識が覆されています。
一体どういうことなのか?実際に当社に寄せられた相談を取り上げて、ご説明したいと思います。
ケース⑴
ある企業様から、かねてから精密板金の容器を使っているが、「女性が使うので、軽くして欲しい。何とかならないか?」というご相談を受けました。実際、お客様が使用されていた容器は板厚1.5mmで女性が扱うにはかなり重いものでした。1度使うだけならまだしも、一日使い続ける製品でしたので軽量化は必須でした。
当初、お客様から板厚1.0mmでの製作をご依頼いただき、サンプルを作成しましたが、もっと軽くしたい!という追加のご要望を受け、板厚0.6mmで容器を製作いたしました。当社の溶接技術としては0.05mm厚まで対応が可能ですが、今回の容器という用途を考えるとある程度の強度も必要と考えられましたので、板厚0.6mmで提案し、お客様に採用して頂きました。
市場に流通する鋼板の板厚は様々なものがあり、精密板金を企画・設計するに際してはあらゆる板厚が選択できる訳ですが、強度面および技術的面から言うと、1mm以下の採用はかなりのハードルが存在しています。板厚ごとに特徴を整理すると下記のようになります。
●板厚1mm以上 | tig溶接での溶接が可能で、強度も出る一方、重い。 |
●板厚0.5mm | tig溶接では溶接はほぼ不可、レーザー溶接が必須。
板厚1mm以上かつtig溶接を行ったものと比較すると強度は劣るが、用途的に強度が問題なければ軽量化には最適。 |
●板厚0.1mm | ファイバーレーザー溶接が必須。軽量化にはなるが強度は不安。 |
上記から、精密板金の軽量化を検討するにあたっては、(ファイバー)レーザー溶接が前提となりますが、既存の精密板金の軽量化を行うのであれば、板厚0.5mm程度が検討の目安になることがお分かり頂けると思います。
実際、今回のケースでは構造はそのまま、板厚1.5mmの容器を板厚0.6mmに変更することで、60%もの軽量化を実現することができたのです。
また株式会社マツダでは、上記のほかにも軽量化に関して様々な対応を行っています。
ケース⑵
トレーを400g以下にしたいというご要望に対し、軽量化のため薄板化を検討。 薄板化による強度不足を解消するため、補強用のリブを加味した上で重量を計算し、板厚0.3mm2B材で設計・製作し、納入。
これまで日本の設計者の方々がずっと手掛けてきた精密板金は、ほとんどが板厚1.0mm以上で設計されてきました。
その中には、軽量化をしたかったが溶接による歪みがネックで板厚を薄くすることができなかったものも多いと考えられます。
しかし昨今では溶接歪みの少ないファイバーレーザー溶接が主流になりつつあり、これまであきらめていた軽量化が実現できる時代になりました。
もし皆様が検討されている精密板金を軽量化したいというご要望がありましたら、ぜひ株式会社マツダにお問合せください。板厚1.0mmのものを0.5mmに変更することができれば、50%もの軽量化に繋がります。
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